◆更生計画の中で

更生計画を進めながら、目の前の事業も進める必要があった。
今後、扶桑工業をどうしていくか。経営陣の中では「経営をガラス張りにしないといけない」ということが一致していた。
管財人の指導もあり、会社にはまず理念が必要である、ということも整理した。

「明朗・真剣・几帳面」は以前にあったが、改めて見直し、徹底することを意識した。
就業規則も全て造り変えた。社員に優しい規則そして解り易い言葉に。

会社更生期間中にも、社員とはもちろん、購買先とも、創業を喜ぶ機会をつくっていった。
これは会社更生が終了した今でも継続している。
更生計画が軌道に載り始めたところで、吉本が社長に就任、高橋は取締役営業技術部長に。

タイミングを同じくして、建機業界の景気が上向いてくる流れがやってきた。神風吹く。
ここぞとばかり生産力アップと、品質アップを同時に進め、筋肉質な経営体質へと会社は変革を始めた。

設備増強が必要も、資金は限りが有る。安い中古機業界との交渉を密に進める。
品質は変化点管理をいち早く進め、機能的かつ効率的な管理体制に変える。
技術開発についても会社更生という岐路から一気に進んだ。
ものづくりの会社が技術開発を追い続けなければいずれ淘汰されてしまう危機感。

他社に真似の出来ないダイキャストの技術開発や、精度を極めるための加工技術や衛生技術の進歩
更に生産効率を高めるための、自動化・ロボット化・屋台化などの生産技術も、全てこのときの産物である。

◆VM活動の導入

リーマンショックで一時の落ち込みはあったが、そのときも経営判断は速かった。
県内ではトップのスピードで雇用調整や従業員教育等を進め、補助金を頂きながらも、結果として一人も解雇せず、乗り切った。

その後持ち直し、会社更生計画のゴールが見え始めた頃、お客様のQCDレベルをクリアするだけでは、永続的なお付き合いをさせてもらえないと考え、独自の魅力を出せる、経営管理指標を探していたときに【VM経営】なるものに出会った。

そのときの印象は「手間はかかるが、スゴイ」というものだった。
導入はとてもパワーのかかることではあったが、きっと必要であるとの意識の中で導入を決めた。
【VM経営】がただの経営管理指標ではなく、管理のプロセスを回し続ける中で、従業員の成長に寄与できると感じたのが、導入の一番大きなきっかけであった。
社員の成長を切に願うのみ。

◆透明な扶桑工業

近年、VM経営もかなり社内で浸透し、PDCAを自然に回す社風が定着してきている。
今後のビジョンについて、吉本・高橋は次のように語る。

吉本(現社長)

現状の仕事に満足するのではなく、お客様や購買先から、新しいテーマをもらい続けられる会社にしたい。
お客様と、できないことにチャレンジできる会社であるからこそ、一度潰れてからここまで成長してこれたので決して驕ってはいけない。常に謙虚に、新しいことにアンテナを貼り続けないといけない。

そのためにも、我々経営陣は常に社員に情報をオープンに届けるべきである。
VM経営で、経営指標を全てガラス張りにして、社員と共有していくのは、今後もやり続けたい。

高橋(現専務)

当社は、倒れた会社だからこそ、社員・購買先・お客様をとても大事にしている。

社員がいるからこそ事業を続ける事が出来ている。購買先にいてもらっているから、当社はモノづくりが行えている。決して裏切ることがあってはいけない。
また、倒れた時の経験を考えると、あの辛い体験を購買先や従業員に絶対味わわせてはならない。それだけは心に誓っている。

会社更生の経験を通して自身の胸中に、「おかげさま」という言葉が強く刻まれた。
色んな方に助けられて今の自分が有る。これからの人生でも大切な言葉となった。

今見据えているのは、やはり新しい技術を伸ばしたい。
それをやれる人材とも出会いたい。
最近考えるのは、次の世代のことばっかり。

技術屋だけでなく、経営人材も含め、20年後、30年後の扶桑工業を支えてくれる人材のことばかり考えている。

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